童謡「シャボン玉」には切ない陰がある。二番の歌詞に「シャボン玉消えた/飛ばずに消えた/生まれてすぐに/こわれて消えた」▼詩を書いたのは野口雨情だ。雨情は札幌で新聞記者をしていたころ、生後間もない娘を亡くしている。その悲しみが、後に「シャボン玉」の詩に結晶したとされる。はかない虹の玉は、みどりごの短い命であった▼大阪・守口の強盗殺人事件で犠牲になったのは、生後十八日の乳児だった。わずかな粘着テープでも、か弱い命を奪う凶器になる。母親の山中いづみさんの証言では、犯人は泣きだす礼弥ちゃんの口をふさぎ、いづみさんを縛った。数万円ほどの金のための、悪びれぬ犯行だ▼子の後を追うように、いづみさんは飛び降りて死亡した。「子供がいなくてさびしい」「死を選ぶのがわたしの幸せと思ってください」といったメモを残していた▼母といってもまだ二十二歳、春には礼弥ちゃんの父親と結婚する予定だった。本来なら、虹色に明るく輝く幸せな瞬間が待っていたことだろう。屋根の上まで飛べなかった二つのシャボン玉に胸が痛む▼雨情の作に「七つの子」もある。カラスなぜ鳴くの。山に子があるからよ。カラスは「かわいいかわいい」と鳴く。雨情はこの詩を「丸い目をしたいい子だよ」と結んだ。死を選んだ母にも、礼弥ちゃんは命に代えがたい、かわいい子だったに違いない。
(北海道新聞より引用)
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